冬山210

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『透明な涙』

透明な涙をペロリと舐めた。
レモン汁の味がした。
酸っぱくて少し苦くて顔を歪めた。

「涙だっておいしくないでしょう、私」

そう言って君はまたレモン汁をこぼした。
僕はすかさず唐揚げを取り出し、
君の涙が床に落ちる前にキャッチした。
そうして食べた唐揚げは、
確かにレモン汁をかけた唐揚げの味がした。

「食べ方次第なんじゃない?
 僕だって生で食べられても美味しくないと思う。
 茹でて食べたら良い出汁出るかもしれないけど」

呆けた顔で僕を見つめる。
涙はもう止まっているようだった。

「君は多分、細かく刻んでふりかけみたいにしたら
 味のアクセントになって良いんじゃないかな。
 好きな人は好きだと思うよ」

そう伝えると、君は俯いて肩を震わせた。
また涙をこぼすのではないかと思い、
僕は咄嗟に唐揚げを取り出した。
しかしその予想は外れていたようだ。

「そっか……ふふ、そっか」

口元を隠しながら笑う。
僕は取り出した唐揚げを口に放り込んだ。
レモン汁をかけていない唐揚げの味がした。

1/16/2025, 12:55:12 PM