『透明な涙』
透明な涙をペロリと舐めた。
レモン汁の味がした。
酸っぱくて少し苦くて顔を歪めた。
「涙だっておいしくないでしょう、私」
そう言って君はまたレモン汁をこぼした。
僕はすかさず唐揚げを取り出し、
君の涙が床に落ちる前にキャッチした。
そうして食べた唐揚げは、
確かにレモン汁をかけた唐揚げの味がした。
「食べ方次第なんじゃない?
僕だって生で食べられても美味しくないと思う。
茹でて食べたら良い出汁出るかもしれないけど」
呆けた顔で僕を見つめる。
涙はもう止まっているようだった。
「君は多分、細かく刻んでふりかけみたいにしたら
味のアクセントになって良いんじゃないかな。
好きな人は好きだと思うよ」
そう伝えると、君は俯いて肩を震わせた。
また涙をこぼすのではないかと思い、
僕は咄嗟に唐揚げを取り出した。
しかしその予想は外れていたようだ。
「そっか……ふふ、そっか」
口元を隠しながら笑う。
僕は取り出した唐揚げを口に放り込んだ。
レモン汁をかけていない唐揚げの味がした。
1/16/2025, 12:55:12 PM