羅針盤
真夜中の海に一人漂う
かすれた声が風に溶けていく
沈む星たち 寄り添う影たち
あなたを探す羅針盤が狂う
記憶の波が押し寄せるたび
冷たい涙が胸を裂く
「帰らないで」って願った声は
深い闇に呑まれた
壊れた羅針盤が指すのは
終わりのない悪夢の海
あなたがいないこの世界で
出口のない痛みを泳ぐ
愛の亡霊が囁く声
「もう戻れない」
曇る鏡に映る歪んだ笑顔
後ろで何かが笑っている
揺れる灯火が道を惑わせ
逃げ場のない迷宮へ誘う
温もりの跡が残る手首
それでも消えない感覚が
首筋に触れた冷たい風
あの夜の香りを運ぶ
狂った羅針盤が示すのは
忘れられない記憶の檻
あなたのいないこの現実で
生きる理由さえ崩れていく
闇の奥から呼びかける声
「こっちにおいで」
静寂が崩れ 耳鳴りが響く
振り向いた先に立っていたのは
あなたじゃない あなたじゃない
けれどその目が私を見つめてた
砕けた羅針盤が照らすのは
終わらない孤独の深淵
あなたを追い続けた果てに
私も何かに変わり果てる
愛の残骸に囚われながら
彷徨い続ける
真夜中の海に沈む影ひとつ
羅針盤はもう動かない
静かに消えていく足音だけが
最後に残る音だった
1/21/2025, 10:01:34 AM