芽吹きのとき
「これはなーに?」
「これはね、大きい大きいお花さんの種だよ」
「なんで土に埋めるの?」
「この大地には神のご加護があるのよ」
「神様ってどんな人?」
「寛大で神々しい方、慈愛に満ちた方、だからこのラグナロクも終わらせてくれる」
そしてまだ幼かった私は母と一緒に手を合わせて祈った
「この災害で多くの命が失われた」
16歳になった私は辛く苦しい亜人戦争をなんとか生き残った
そして神父さまのありがたい言葉を教会の端の席に座り傾聴していた
「ラグナロクは去った!だが多くを失った、ここにいる者たちみな悲しみを胸に抱いているだろう」
神父様は少し沈黙した
神父様にも何か思うものがあったように私には見えた
みんな静かに神父様の言葉を一言一言聞き漏らさないようにしている
何十年ぶりという静寂がこの空間を包みこんでくれる
「これから、1からみんなで再始動しましょう!」
神父様の言葉を聞き終わり私は外の空気を吸うためにまだ戦争の痕跡が残る風景を眺めながら大きな教会のお庭に出てきた
「お母様のことはご愁傷さまでした」
そしたら後ろから声がした
振り向けば私に話し掛けてるのがわかった
なんせ私しかその場にいなかったから
「ありがとうございます」
「お母様は偉大な戦士だ、お母様のおかげでこの戦争という名の災害は終焉を迎えた」
私のお母さんはみんなから称えられる戦士だった
私も尊敬している
「ちょっと1人にさせてください」
母の話が出るとまだ思いが溢れそうになってしまう
「すみません、またの機会に」
ごめんね、そう心のなかで謝る
そして去っていってくれたとおもったが
「あの!私はあなたのことを未来の希望だと思ってます!」
それだけ告げて走って行ってしまった
教会の中庭で私は未だに1人哀しみに耽っていた
「これは、、、」
私は見つけた、未来への希望を
大きな桜の木となる小さな子どもが芽吹いていた
「これからお互いに頑張って立て直そう、母が命を惜しんででも守った美しい世界を」
3/1/2025, 11:38:45 AM