花束
花には、花言葉という人間が勝手に花につけた、綺麗事の言葉がある。僕は、綺麗事で付けられたような、花言葉が嫌いだ。花が可哀想である。
「ねぇこれ、受け取って、くれないかな」
頬を桜色に染めた彼女から差し出されたのは、花束だった。紫色のスミレだった。
「どこかで買った?それともなに?どっか道で拾ったやつ?あー花言葉?俺ね、嫌いなのそーいうの」
冷たく言い放った。でも、彼女は負けなかった。
「私が、育てた」
「…え?」
「あなたのために、毎日水やってこんなに咲いた。花言葉?どうでもいい。私は、ただ君に想いを伝えたかっただけ。私は、この花言葉が好き」
そして、彼女は僕に一歩近づく。
「愛してる。そういうとこも」
所詮は綺麗ごと。
でも、その綺麗事は、誰かを幸せにする。誰かを素敵だなと思わせて、運命を変えてくれる。
「…ありがと。受け取る」
「よっしゃ」
紫色のスミレの花束を持った彼女は、とても美しく、綺麗だった。
2/9/2024, 11:03:00 AM