雨の中傘を差しながら二人で歩いていると道の傍らに咲く花に彼女が気づき吸い寄せられるように近寄って行った。
「あじさいが見れるようになるから梅雨っていいよね。」
同意できない。彼女の感性はときどき僕とは合わない。僕はそれだけではまったく梅雨を許せない。季節を楽しめない僕は彼女の感性を羨ましく思った。
「あ、見て。かたつむりだ。かわいい。」
同意できない。彼女の感性はときどき僕とは合わない。僕にとってはむしろ気持ち悪い。可愛いという言葉を聞いて僕はつい前から思っていたことをこのタイミングで彼女へぶつけてしまった。
いつも可愛いって言ってくれるけどそれってかたつむりと同じような可愛さの意味で言ってる?
彼女はよく僕を可愛いと言う。外見も内面もしゃきっとできずどろどろとしたなめくじのような僕にだ。前からそれが不思議で仕方なかったのでつい口を滑らせ聞いてしまった。ああ、面倒くさいなめくじな質問。彼女は即答した。
「うん、そうだよ。」
そうなんかい。
と僕も反射的に言うとすぐに冗談だよと彼女は笑った。彼女があまりに早くそして真顔を作って答えるから僕も笑った。それから二人の笑いがおさまった後で彼女はいたずらっぽい目をこちらに合わせて言った。
「 ?」
僕は同意した。
6/13/2024, 11:03:28 PM