いとだま

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一年後とか百年後とか

 おばけみたいなものです。希死念慮というやつは。ぼんやりと、追い詰めてくる。そして一度でも、たった一度でも、やつの正体をはっきりと見てしまえば、もうお終いです。僕ら、ぴょんって飛びます。いえ、それは飛翔ってよりは墜落って具合ですが。
 兎も角、僕はしっかり見ました。やつの姿形を捉えました。だからです。今年の手帳に書くことはもうありません。来年も同じです。その先も、同じ。
 さて、僕はいなくなるので、僕の世界は滅びます。僕を取り巻く自然だって、僕の観測なしには意味をなさないのですから。ええ、お終いです。未来もなにも、ありはしません。一年後とか、百年後とか、思いを馳せる必要も、ありはしません。

5/8/2023, 1:41:18 PM