[二人だけの秘密]
「ちょっと、これアンタの友達じゃない?」
重たい雲が空を覆っている、そんな朝。
母親に言われて目をやったテレビには、確かに高校の頃の親友の名前があった。
それも、凶悪犯罪者として。
「あの子、あんなに真面目でいい子だったのに、何かあったのかしら……何か聞いてないの?」
「さあ、しばらく連絡してないからわかんない」
彼女は母親の言う通り品行方正で明るく、誰にでも好かれるような性格だった。
おまけに正義感も強くて、どんな小さな悪事でも見逃したことは無い。
そう、あいつは悪いやつだった。
あいつに泣かされた女子は何人もいたし、怪我をさせられた男子も沢山いた。
なのに咎める大人は誰一人いなかったから、当時クラス長だった彼女が代わりに皆を守ったのだ。
私は親友として彼女のことを手伝ったけれど、優しい彼女はその事を警察には言わなかったらしい。
月明かりも届かない森で交わした秘密の約束は、遂に白日の下に晒されてしまった。
5/3/2024, 11:35:00 AM