うぐいす。

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 ―――ずっと子供のままでいたい。
 誰だって大人になれば、一度はそう零すはず。
 だってそう。相対的に見れば、子供の方が大人よりも利点がある。
 例えば、一週間に二回は必ず休みがある。休日出勤だなんていう忌まわしい言葉に縛り付けられていない、自由な子供が羨ましい。
 例えば、お年玉が貰える。俺は高校生に上がった時点で大人の仲間入りとして扱われた為、お年玉は中学生までだったが・・・、それでも、自分で稼がず勝手にお金入ってくる環境ってサイコー!
 例えば、例えばそう―――子供なら、夢を見るのだって自由だ。空を飛びたい。魔法を使いたい。子供てったって、それが許されるのは小学生くらいまでだろうが・・・、口にせずとも、見る分なら自由気ままだ。いつまでも新人気分で居られちゃ困ると、夢を見る暇も与えられない大人よりは、自由だ。
 そんな感じで、今日も俺はへとへとに腐り果てて帰路に着く―――途中、公園を横切った時に、風で揺れるブランコを見て、昔の記憶が想起した。
 そういえば小さい頃―――とは言っても、小学校低学年の頃の話だが、有名なスタジオ作の映画をテレビで見て、いつか俺の前にも、美少女が舞い降りて来ないかなぁなんて想像してたっけ。
「・・・っと、いけね。こんなことしてる場合じゃねぇよ。早く帰って残りの仕事終わらせねぇと」
 懐かしさに浸るのも程々に、俺は家の方角へと足を向けた―――その瞬間だった。
 めいいっぱいの力で、腕を引かれたのは。
 そして、俺が振り向くと同時か否か、腕を引いた主であることは間違いない、凛とした声が響いた。

 「お願い、追われてるの! 助けて!」

 まさかこの一言で、幼少期に描いた夢が現実のものになるとは思わなんだ―――。

5/12/2024, 4:58:01 PM