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光と影




「人間というのは、私利私欲にまみれてるなあ」

「熊手も人間だろ?」

「まさか。ほぼ神の俺様にそんなこと言うとはな」

人差し指に指輪を通している右手をギュッと握ると、強い眼差しで彼は拳を見つめる。

彼はどうも、その人間性が掴みにくいため、本当に人間ではなくなってしまったとかと、不安になってしまう時がある。

あんな自信に溢れている彼を、心配するだけ無駄だと思うけれど。

「そうだなあ……百夜陸王。お前はどうだ?」

腕を伸ばし、僕を人差し指で指す。

一体何を訊かれているのか、僕には分からなかった。

けれど、きっと自分の願いというのは、熊手真白の言う私利私欲なのだと、直観的に感じた。

「僕は、神になりたいなんて思ったことがないから。そんな客観的に見ることは出来ないかな」

「そうか。じゃあ質問を変えよう。お前の大切なその『玲さん』とやらは光か影、どっちだと思う?」

玲さん。玲さんは僕の人生において、全てを救ってくれて、全てを狂わせた男だ。

光と影。反対に見えるようで、実は反対ではない。それは、影というものは光によってでしか現れないからだ。

僕は、玲さんによって輝くことが出来たと思う。なら、玲さんはどちらなのだろう。

「僕にとって玲さんは、……僕を照らしてくれる存在だ」

熊手真白はいつものように座って、足を組む。何処か呆れたように、僕を見つめる。

「話が通じない奴だ」

「だけど__」

「いいか。よく聞け」

僕の口の前に人差し指を立てる。彼は片眉を上げて、いつものように偉そうな態度をとっている。

「光というのは影があるから成り立つんだ。その逆も同じこと。どちらかがなければどちらも、名前は付いていないだろう?」

「そう……だね」

「つまり、光と影というのは互いに依存しているんだ。なら、百夜陸王。お前は『玲さん』に依存しているのか?」

きっと僕は、顔を顰めていたと思う。眉間に皺を寄せて、長考していた。

熊手は、僕に一体何を伝えたいのだろうか。そう考えれば考えるほど、僕は玲さんの存在が分からなくなる。

「……分からない。僕には、その答えが」

回転式の椅子を回転させて、僕を視界から外す。

手には彼の大好物の蜂蜜を持って、そのまま直で飲む。

「お前には分からないだろうな」

「じゃあ、……君にはわかるの?」

鼻で笑う声が大きく聞こえる。肩を上げて、なんでも知っていそうに。

「さっきお前も言っていただろう。お前は神じゃないから客観視出来ないんだ。だから、俺様には分かる」

「その自信はどこから来るの……全く」

「お前とは違って、光と影の区別がついているからな」

「さっき互いに依存してるって言ってたよね?」

腕を組んで自信が滲み出ている雰囲気を醸し出す彼に、もしかしたら尊敬を示しているのかもしれない。

だが、一応僕も自分に自信があるつもりだ。ただ、玲さんとの関係に自信が無いだけで。

「ああ。そうだ。だが、今の世界では二つとも独立している。それはお前だってそうだろ」

「……確かに」

「あとな。自分が光になれば、影という仲間や敵が勝手についてくるだろう?」

熊手も、いつも神だと嘆いているだけだと思っていたが、どうやら色々なことを考えているらしい。

少し面白くて、口角を上げる。

「流石、自称神なところだけあるね」

「おいお前、馬鹿にしてるのか?」

勢いに任せてこちらを向く彼は、やはり何処か神になるには足りない気がした。

「さあ?どうだろうね〜」

「おい!……はあ、」

10/31/2025, 10:53:08 AM