工(たくみ)

Open App



小さな夜明けを見たような気がした。鳴り止まない頭の鐘とは分離されたように、体の中は静かで淡々と暗かった。
月こそ夜明けの太陽なのかもしれない、なんて言う、典型的で平凡な暗闇をこの身で感じ、自分の中の虚空を探している。
月明かりが眩しくて眠れない。夜明けは、嫌いなのだ。朝の鳥が苦手なのだ。
目覚ましに音で涙が出るのだ。
実に涙脆くなった。昔は、冷静で穏やかな、空虚な、大人の真似事が上手だった。今は子供のように自分の奥底に従順だ。若返ったような感覚で。子供のように、奥底からの純粋なフリが上手くなった。
物語の始まりが、朝日から始まるなら…



4/19/2025, 3:54:58 AM