『どこにも行かないで』
17時の放課後のチャイムが学校中に響く...
外は雷を伴う雨で外で活動する部活は
夕方のホームルームが終わると体育館で
別のメニューをするか帰っていっただろう。
帰宅部の俺には関係の無い話だ。
俺もホームルームが終わり次第帰ろうと思っていた。
「...」
...同じクラスメイトのこいつに捕まるまでは。
こいつは普段無口で何を考えているかわからない。
本当に必要な時にだけ口を開くもんだから
最初口を開いた時はとても驚いだ。
クラスメイトはひとりで雨の中帰ることができないらしく、
普段迎えに来る親も都合が悪くて悩んでいるところに
俺を見つけたらしい。
時間を稼いで諦めるのを待っていたが
結局こんな時間まで諦めなかった。
仕方ない。そう思いトイレを済ませて帰る準備をしようと
立ち上がると俺の制服の裾をぐいっと引っ張り
バランスを崩して椅子に座る。
「ちょ、危ないだろ。」「お願い、行かないで」
こいつが口を開く。
よく見ると裾を持つ手がかすかに震えていた。
こいつなりに事情があるんだろう。
...そんなことされたら見捨てることなんてできない。
「わかったよ。家まで送っていくから帰るぞ。」
クラスメイトの顔が少し晴れた気がした。
俺が立ち上がると急いで
荷物をまとめて俺の背中に着いてくる。
トイレの前を通ろうとして
さっきトイレに行きたかったのを思い出した。
「悪い。先にトイレに行かせてくれ。」
「わ、私も着いていく。」
「いやさすがにダメだろ。」
語り部シルヴァ
6/22/2025, 10:19:07 AM