奏汰

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恋は盲目

待っている。
ずっと、この場所で。
『また、会いに来るね』
そう私に微笑んでいたあの子が来るのを待っている。


「やあ、久しいね。糸桜」
そんな風に私を呼ぶモノは宮内しかいない。私は木の下にいる宮内に目を向ければ野球帽を被った少年は屈託のない笑みを私に向けた。今回は少年らしい。相変わらず、人間の顔を作るのがお上手だ。
私は木から飛び降り、宮内の横に並ぶ。
「今回の依頼は何かな」
「そんなもの言わなくても分かっているでしょう」
私は『私』の根元を指す。桜の木の下、根っこの下に絡み付くように呑み込まれた人間や獣の骨。すべて私の養分になったモノ。
「棄ててきてちょうだい」
ハイハイ、と相槌を打つと、
宮内はリュックサックの中から大判の風呂敷を取り出した。手袋をはめると根元に絡み付いた骨をひとつひとつ風呂敷の上に乗せていく。この後、宮内がこの骨をどうするのか私には関係のない話だ。


1/20/2023, 10:07:59 AM