谷間のクマ

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《誰も知らない秘密》

*明里✖️蒼戒 正体バレif

 私、熊山明里には誰も知らない秘密がある。あ、いや、ビジネスパートナーであり友人の美架さんとか自由人(母)とか何人かは知ってるから誰も、ではないか。
 まあそれはさておき、その秘密とは、『私が怪盗ブレインである』ということ。
 怪盗ブレインは現代社会を騒がす大怪盗で、少数派の意見を尊重するため、活動している。最近はネバーワールドナイトという悪の組織の狙う宝を先取りして、その宝を守る、といったこともしている。
 怪盗ブレインは私が高一になった時、母から引き継いだ。つまり私は二代目。初めは混乱したものの、ノリと気合でなんとかやってきて、今日まで来た。
 でも正直、そろそろ限界、かもしれない。

 時は高三の春、桜吹雪の季節。私は今、幼馴染でクラスメイトの蒼戒に正体がバレかけている。
「……結局どうなんだ、明里」
「それ、は……」
 ああもう、どうして君はこうも勘が鋭いのかな。私の正体が君にバレたら、私は君の隣にはいられないのに。
 ヒューー、と強い風が吹き、桜の花びらを舞い散らせた。
「……あ、明里……?」
 あーあ、いつか自分から言おうと思ってたのにな。
 私は桜の花びらが蒼戒の視界を奪った瞬間に怪盗ブレインの衣装を纏った。
「……そうだよ。私は熊山明里。またの名を……怪盗ブレイン」
 ごめんね、蒼戒。私はもう、君の隣にはいられないみたい。犯罪者の私なんて、君に相応しくなんか、ないもんね。
「……そん、な」
 蒼戒が嘘だと言ってくれ、とでも言いたげな顔をする。
「嘘じゃないよ。さあ、君はどうする?」
 私は君の前から姿を消すよ。君はどうする? 私を、追いかけてきてくれるかな?
 でも、誰かに正体がバレたら大人しく自首しようって、ずっとそう決めてた。
 だから、バイバイ、蒼戒。

 誰も知らない秘密がバレた時、私は君の前から姿を消す。

(おわり)

2025.2.7《誰も知らない秘密》

2/7/2025, 6:08:32 PM