白糸馨月

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お題『夜空を駆ける』

 むしょうに外へ出たくなった。時計を見た時間は深夜0時。
 親はとっくに寝静まっているので、こっそり家を出ると自転車に乗り、ひたすら走る。着いた場所は、灯台が見え、海が見渡せるところだ。
 俺はそこに自転車をとめて光る灯台と、きらめく星々と、暗い海を見つめていた。空と海の明暗がはっきり分かれる場所。一人になりたい時、よくここに来るようになった。
 親は出来のいい兄にかまけてばかりで俺を見てはくれない。いっそ海に飛び込んでしまおうか。そうすればようやく俺に目を向けてくれるから。
 でも、死にたくないな。
 そう思って、空を見上げる。きらめく星々はまるでこの世のものとは思えないくらい綺麗で、俺だけ放置されているくせ親の思うとおりにいかないと叱られる現実から目をそらすことができる。
 あぁ、だから人は星に願うのだなと思う。
 俺は今日も願った。
「はやく、一人で生きられるようになりますように」

2/22/2025, 6:21:38 AM