NoName

Open App

リズムを刻む電車の窓を見ながらほうづえをつく君。
退屈だと言わんばかりにあくびをした。
普通なら気にならないのに君が見ているから見てしまう。
特別でもなんでもない殺風景な風景、正直どこも面白くない。
でも君と同じ景色を見ていることだけが幸せだった。
僕らは今見知らぬ街に逃げている。
遠い遠い街、何にも追われてないくせに勝手に周りの圧を察して嫌になって気持ち悪くなるまでが1日のルーティンだった。
そんな僕を救ってくれたのが君だった。
きっと君は気づいてないんだろう?
君の何気ない一言が僕にとっての浮き輪だった。
深くて暗い海に沈んでいた僕に光が刺して…
時々自分に嫌気がさす、恩人にも関わらず比べてしまう。
君の暖かさは痛いほど暖かかった。

8/25/2025, 12:49:06 AM