白眼野 りゅー

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 僕の彼女は、美しい。立ち姿が、笑顔が、振る舞いが。

「僕は、君みたいに美しい部分なんて一つも持ってない」
「あるよ。君が、私に美しさで勝ってる部分」
「え?」


【君より美しいそれ】


「えっ、ど、どこ? ……いや待って、自分で考えたい!」

 心根まで美しい君は、こういうときにお世辞を言ったりはしない。その君から、一つでも美しさで勝てる部分があると言ってもらえたのが嬉しい。負けず嫌いなわけじゃないけど、君とはなるべく対等でいたいから。

「顔……は言わずもがな君の方が美しいね。姿勢……も駄目だな。君のぴんと伸びた背筋がこの世で一番美しいに決まってる。君は書く文字すら美しいよね。というかもう、選ぶ服も足の運びかたも、頭から爪先まで余すところなく美しいよね、君は」

 言葉通り頭から爪先まで君をじっくり観察して、言う。ちょっと照れたような表情も当然、美しい。

 だけど観察の甲斐あって、気づいた。ここなら、確かに僕の方が美しいかもしれない。

「目か……!」
「目?」
「僕の目は常に美しい君を映しているけど、君は鏡でも見ないと君自身を映すことはできないからね」
「……」
「……え、違うの?」
「あはは、違うよお。なんでそんなとんちみたいな答えになるの」

 声を出して笑うのにすら気品を感じる。本当に美しい人だ。……だからこそ、今の答え以外で君に勝っている部分なんてないと思うが。

「私は、そうやって君が私を褒めるために使ってくれる言葉の一つ一つが、世界で一番美しいって思ってるよ!」

6/11/2025, 4:28:26 AM