ずい

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『生きる意味』

母親は知らない。父親と呼べる男はいま俺の上で殺された。
お前を売るしかないんだと、そう言った目は血走っていた。いつかの日のために隠し持っていたナイフは右手の中。その切っ先は上で寝そべる男の腹に刺さっていた。
でも死んだ理由はそれじゃない。

「大丈夫か」

男の脳天に一発弾を撃ち込んだのは目の前に立つ青年だ。
足で死体を転がして返り血にまみれた俺の体を抱き抱える。

「おまえ、行くとこあるか?」
「ない」
「お得意の孤児院はあるが、あそこに入れるにはもったいないか」

右手に張りついたままのナイフを見て青年が言う。
遠くない未来に師と呼ぶことになる青年。

このときはまだ、この人に捨てられないように生きなければと必死で青年の背中を掴むことしかできなかった。

4/28/2024, 5:15:54 AM