我妻

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 『二人の距離は280マイル』

 ──日本航空からご案内いたします。日本航空102便、7時5分発東京羽田行きは──

「嫌や! はなればなれになりとうない!」

 ビジネスマンが行き交う早朝の大阪国際空港の北ターミナルに一つの声が響いた。
 僕の彼女。今から東京に一人で飛行機に乗って向かう彼女の声だった。保安検査場の前で僕に抱きつきながら離れたくないと言う。

「最初は別々になっても大丈夫かなって思ったけど、いざ行くってなったらやっぱり寂しいんやもん!」

 彼女は普段は気丈に振る舞っていた。僕なんて必要ないんじゃないかというくらいに芯が通った人で、いつも僕が彼女に助けられてばかりだった。
 こんなところでそんな彼女の可愛い一面が見れた嬉しさと、早くしないと搭乗出来なくなる焦りとで僕の心は掻き乱されていた。

「そんなん言わんといてや、東京行ったらすぐ会いに行くから」
「うぅ......分かった......約束やで......」

 絶対にすぐに会いに行くと約束すれば、ようやく彼女は僕から離れ、何度も振り返りながら保安検査場へ消えていった。

「付き合うときにマイレージクラブ統一するべきやったなぁ......」

 彼女が見えなくなるとぼやくようにそう呟き、僕はANA986便──7時5分発東京羽田行き──の搭乗手続きのために南ターミナルへ急いだ。

 ──お題:はなればなれ──

11/16/2024, 12:51:40 PM