【わかってるつもり】
あなたの言葉を理解しているはずだった。
いや、しているつもりだった。
「優月ちゃん、もう優しくしんでいいよ?」
「というか、もうしないで、ただただ私の心が苦しく絞め上げられるだけなの。」
そう、すぐにでも消えてしまいそうな儚い顔をしたあなたを見るまでは。
その次の日から私の隣をいつも歩いていた彼女・琴葉は隣を歩くことをやめた。
学校は同じであっても、学年も同じであってもお互いが出会うことすらなくなった。
「あ、ゆっちことちゃんは?」
「あー、最近会ってないなぁ。芽依知らん?」
「いや、うちも知らんよ、ってかあんたの話でしか聞いたことないから面識ないって!」
「めーちゃん、ことちゃんって?」
「あー瑠羽知らないのか、ことちゃんは琴葉ちゃんていってゆっちのかn「芽依。」バディだよ。ほら、幼馴染同士で演劇部の部長副部長してるって話聞かんかった?引退前まではここの王子様とお姫様コンビとか囁かれてるから知ってるだろうと思ってた。」
「あぁ、月代さんかぁ。あのホワホワした感じのよくおさげしてる子だよね。私委員会一緒だから昨日集まりで会ったよ?」
「え、そうなの?!だってよゆっち。」
「だってよって言われても………。るーありがとね。」
「? いえいえ〜、また何かあったら言ってね。」
教室で帰りの準備をしながらイツメン3人でそんな話をする。
あの日以来、帰宅途中によぎるのは琴葉に言われた
「優しくしないで」という言葉。
なんとなく理解できている気がしていた。
もう私を甘やかさなくていいんだよって彼女が言いたがっていたような気がしていた。
でもそうしたら不正解、という意味合いで何も連絡をよこさないだろう。
ふと思いついた、私的には最悪の回答を琴葉のメッセージに打ち込む。
半分忘れていた頃に返ってきた返信。
それには
〈正解。気づくの遅いよ。ずっと待ってたのに。〉
とだけあった。
私は決して優しいわけではない、それをいつまで隠していられるかと思っていたが、タイムリミットが来たようだ。
〈私は優しいから告白に応じたわけじゃないよ。琴葉を独り占めしたかったから応じたのに。〉
それだけをまたメッセージに残した。
5/2/2024, 3:27:46 PM