「視線の先には_。」
高い電子音が鳴る。
音を上書きするように、嗚咽のまじる湿った高い声が白に囲まれた空間に広がっていく。
その声は白い雲を濡らし薄く濁し、やがて生命の乾いた大地を濡らす。
雨音が伝染していく。やがて雨音しか聞こえなくなる。
降れども、触れども、その大地から芽吹くことは無い
渇きは癒えても命は戻らない。
『私のために雨を降らせてくれてありがとう』
視線の先には、咽び泣く母親と親戚たち。
癒えた心の種から大地から育った大きな蔦、みんなが育ててくれた心は高く雲を突き抜ける。
私はそれを登りまた新しい命の花をどこかで咲かせていた。
7/20/2023, 10:19:57 AM