飛べない翼 途中
私が生意気な学生だった頃、教育実習生が大嫌いだった。その感情の内訳はさまざまであるが、大部分を占めていたのは、大学生というおちゃらけた生態とその若さゆえの未熟さや初々しさが嫌いだったのだ。だから、どんなイケメンだろうが美人だろうが、くる奴は全員嫌いだった。私はいかにも、職場にいる嫌なお局上司よりも遥かにタチの悪い、未経験クレーマー高校生だったのである。
この心理はどこから来ていたのかわからない。社会人も大学生もどちらも経験した今となっては、当時の自分のような高校生がいたらぶっ飛ばしていた。高校時代の私は、ここがまさにいやらしいところではあるが、内心はドロドロと汚い感情が渦巻いていたにも関わらず、表面上では優しく明るい人間を演じていたのである。そんなん生きとる上で当たり前だろ、と言われればその通りなのだが、それを加味しても内面が荒んでいた。誰の命令も聞きたくなく、誰の指示も受けたくない、私は努力したくないのよ、そうじゃなくても私は特別なの!と叫ぶあまりにも空っぽな人格だけがそこにはあった。
なぜ、そのような女子高校生だったのかと言えば、私の人生史を辿るには、自分でもまだ時間がかかりそうなのである。落ち着かなかった家庭環境をひとずつ紐解いていっては、あまりにも要素があるのに、言葉にすれば酷く言い訳がましくなる。私はこんなに大変だったの、傷ついたの、と、理解されるように求めている自分を自覚することは私にとって酷く惨めなのだ。なぜならば、それは経験していなければ到底理解も共感なども及ぶことではないと知っているからこそ、私は傷つきたくないあまり他者に自分の経験を話せないでいた。
そんな私は、私は誰よりも子供だったのに、大人びていた。反抗期などなく、そしてその実、万年反抗期であった。私は人と比較することでしか安心できず、そして常に不安だったのである。私は私以外の人間が大嫌いで、私は私が一番大嫌いだった。
そのような自分自身と決別したのは、社会人になってからだった。世の中を恨み、文句を言い、誰よりも悪口を言った。嫌われる前に、私が周りの人を嫌いになった。人が離れた後、私はみんな消えてなくなればいいのだと思った。散々汚い感情を撒き散らした後に気がついたことは、自分がいなくなった方がはやいということだった。そこまで成り下がった後に、ようやく私は気がついたのである。なんの中身のない自分自身に。
今まで馬鹿にしていた綺麗事が、身に染みてしまう。それは、過去に自分が、いつのまにか、してしまった罪と対面することでもあった。
愛しましょう、人を大切にしましょう、なんて、私は自分のことで精一杯だから黙ってよ!と、いつもバカにしては遠ざけていた。私は内面が最低なんだから、見た目は綺麗でいないとと、外側を固めた。BMIが下がっても、二重の幅が広がっても、変化したのは呆れるほど意味のない人の目線だけだった。私の人生はむしろ、自分を隠すことに必死になっていたのだ。
自分は何をしたいのか、どういきたいのか全くわからなくなった。いっそのこと、阿弥陀籤か何かで決めたかった。いつからこんなにも人生のサイコロが間違ったのかわからなかった。自分がどうしたらいいのかわからなかった。傷つくのがただ怖かった。
私は、自分の抱える罪悪感と、悔しさと、おおよそ思いつくチンケなゴミ屑みたいなどす黒い感情に押しつぶされていたのだ。都会の人混みで私はひとりぼっちだった。
自分は1人だったことを自覚した時、私は自分に何もないことを知った。みんなにあるものが、ない、ということを私はその時初めて自覚したのである。
空っぽなこころを認めざるべく、嘘をつき虚栄心だけで生きていたことを認めた。情けない生き方をしていたのは、過去に所以するものではなく、今まさに自分自身なのだと、私は自分で納得した。
そのとき、私は自分の背中には、美しい翼などなく、小さく見窄らしく、枝のような翼しか自分には残っていないことを直視できたのである。それは剥き出しの骨のようである。手入れもされず、守られず、大人になってしまった羽。私が思うように人生を操縦できていないのは、私には十分な羽のついた翼がないことを、私が知らなかったからだった。この翼はなるべくしてこの形をしていたのである。そして、もう、自分が思うようには飛べないことを、私は知った。
飛べない翼-創作
これをもっと具体的なストーリーにした話を書きたいです。
最後はもっとポジティブにしたいです。
人って、疲れた時が本性出るとかよく聞きますが、
疲れてる限界なときって、逆に1番本性からかけ離れた別人格ですよね。最低でも生きてればそれでほんとに良いんだよなぁ…と、思いました。だって、みんな人間だから清く美しく生きる必要もないんだよね。生きるのに必死だもん。私は、未熟のまんま大人になった感じが否めないのですが、あまりにもガキな自分と共に、少しずつ大人になれるように生きていこうかなと最近少しだけ思えるようになりました。人にどうこうしたい、とかいう慈善精神はありませんが、自分の内面に心の底から自信が持てるように、人に愛情を持てる人になりたいなと最近思いました。飛べない翼というお題を見た時、カスだった当時の自分が浮かびましたが、遅くても今から始める行動や言動のひとつひとつが大きな翼になれば良いなと思います。
これを創作で書きたいなぁ。もはや創作じゃなくてエッセイになりそうだし、最近境目がなくなってきてるなぁ…
11/11/2024, 4:52:28 PM