愛言葉
「おにぎりあたためますか?」
お、と思った。久々に聞いた。
東京から地元北海道にもどり、小腹が空いたからコンビニでおにぎりを買った。この言葉。久々に聞くと戸惑うものだ。
学生の頃には日常的に聞き慣れていたが、内地では、某テレビ番組の名前として有名だと知り、なんだか違和感があったものだ。しかし今、改めて店員さんから直接言われると、いつの間にか自分の中でその言葉がテレビ番組名としての印象に置き換わってしまっていたことに気づいた。
「あ、お願いします。」
店員のおじさんは無表情かつ手慣れた様子でおにぎりをレンジに入れた。おじさんにとっては日常の一部、あるいはマニュアル通りのルーティンなのかもしれない。
けれども、この何気ないやりとりに、心がじんわりと温まるような感覚が広がってくる。ビジネスライクなやり取りの中に、ふと人とのつながりを感じさせる。
「愛言葉」なるものがどういったものかは知らないが、
おにぎり温めるかどうか聞くこの質問を、愛言葉の類のひとつと言われたら私は納得してしまう。
温まったおにぎりをレジ袋には入れず、手渡しでもらった。
単にレジ袋代をケチっただけだったのに、
コンビニのおじさんが温めてくれたおにぎりは、
私の冷えた指先をじんわりと温めていた。
10/26/2024, 3:06:38 PM