『涙の理由』2023.10.10
わぁわぁと生まれたばかりの娘が泣いている。次男はすわ何事かとうろたえて俺を呼びに来た。妹が泣いていると、自分も泣きそうになりながら伝えにきたので、ありがとうと礼を言って彼女の元へ向かう。
すると、そこにはすでに長男がいて、ほとほと困った顔をしていた。
その傍らには新しいオムツとミルクの入った哺乳瓶がある。それだけで、彼がいろいろ考えて泣き止ませようとしていたのがわかった。
そんな努力に目頭が熱くなる。ああ、お兄ちゃんになったんだなと。
しかし、俺はパパだ。伊達に二人も育ててきていない。俺に任せろと、娘を抱き上げた。
オムツでもミルクでもないとなると、きっと彼女は寂しいのだろう。抱っこしてゆらゆらと揺らすと、余計に娘の泣き声が大きくなる。
いないいないばぁをしたり、話かけたり、彼女が絶対に泣き止む曲をかけても意味をなさなかった。
情けない男三人で、あの手この手で小さなお姫様を宥める。
しかし、それでも彼女は泣き止まない。
もしかすると、どこかが痛いのかもしれない。これは一大事だ。
スマートフォンを手にして、かかりつけ医に電話をかけそうになったとき、妻がリビングに戻ってきた。
号泣する娘とうろたえる俺たちを見て、全てを察したらしい彼女は困ったように笑った。そして、俺の手から娘を掬い上げる。
するとどうだろう。今まで号泣していた娘はぴたりと泣き止んだ。それどころかキャッキャと笑顔を見せている。
どうやら、彼女はママが恋しかったらしい。
そういえば、息子二人が赤ん坊のときも同じように妻が抱っこすると泣き止んだことがある。
すっかり忘れていた感覚に、ブランクの長さを思い知り、改めてママは強いなと思った。
10/10/2023, 1:31:35 PM