燈火

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【これまでずっと】


何度、見送ってきただろう。
頭痛がするほど歪む視界。涙はとうに枯れてしまった。
全身が心臓のように脈打ち、地面も揺れているみたいだ。
経験ばかり多くなって、いつまでも慣れる気がしない。

見送るたびに他人と生きることを諦めたくなる。
それでも僕は誰かを見初めて、一緒にいたいと願う。
「ありがとう」「ごめんね」「また会えるよ」
相手はいろんな言葉を遺してくれた。

思い出を整理していると写真が僕に笑いかける。
僕を呼ぶ声が聞こえる。おいで、と手招いている。
そっちに行こうとすると、誰かが僕の腕を引く。
「どこ行くの?」少女が首を傾げていた。

「あなたは寂しがりなのよ」と友人が教えてくれる。
失うことに怯えながら、一人では生きられない性質。
可哀想だと口にしても、その目に同情は滲まない。
短い付き合いだけど、彼女は誰よりも僕を理解している。

初めて話したとき、彼女は迷子の子供だった。
わざわざ僕の家の前でうずくまって泣きじゃくる。
すぐに迎えが来て、引き離すように彼女を連れていった。
なのに翌日、彼女は満面の笑みで僕の外出を待っていた。

「あなたは変わらないね」と友人が眉尻を下げる。
女子の愛嬌を残しながら、女性として凛と生きる彼女。
打ち明けなくても、聡明な彼女はきっと察している。
気味が悪いだろうに。彼女は変わっている。

そんな彼女とのティータイムは安らぎを与えてくれる。
彼女は持参の茶葉で紅茶をいれ、僕は洋菓子を用意する。
紅茶に口をつける、と、カップが手から落ちて割れた。
やっぱり彼女は誰よりも、僕よりも僕を理解している。

7/13/2023, 5:03:30 AM