数年ぶりに見たあなたは、
あの頃より少しだけ大人になっていた。
私に恋を教えてくれた人、そして私の思い出の人。
今よりずっと臆病で、ゆえに嫌われ者だった私。
男子からの冷たい視線、表情に滲み出る嫌悪感。
いつも下を向いている暗くて地味な女、
だから嫌われても仕方がないと思ってた。
でもそう、あなただけは違った。
差別のない平等な目で私を見て、仲良くなろうとまで。
こんな私に笑いかけてくれたのは、あなたが初めてだった。
つまらない反応でろくに受け答えもできない私を
あなたはどんな時も気にかけて歩み寄ってくれて、
目が合えばいつも
太陽のような笑顔で微笑みかけてくれた。
あなたのその温かい視線の先でなら、私は前を向けたの。
あなたが私に笑いかけてくれるから、毎日が幸せだった。
あんな風にすれ違ってさえいなければ、
いらない意地なんて張ってあなたを傷つけなければ、
きっと失っていなかった。
"嫌い"
友達に馬鹿にされて、
自分の気持ちをとっさに誤魔化すために言ったあの一言が、あなたにまで届くと思っていなかった。
軽蔑したような冷たい視線、避けるような態度。
誤解を解く瞬間さえ与えないほど、
あなたは私から離れていった。
そう、あの日からあなたは私を見て笑わなくなった。
最初からあなたの優しさなんて知らなければ、
あなたから笑顔を向けられることがなければ、
こんなに虚しくなることもなかったのに。
求めてしまった、だからやっぱり辛かった。
そうして交わらないまま進んだ時間。
忘れかけていた記憶は、あなたを見て鮮明に蘇った。
人目を引く金色の髪、目立つあなたによく似合ってる。
そうやってあの頃のように私は、
あなたを遠くから見つめることしかできない。
ふと、視線が交わる。
やっぱり、ぴくりとも動かない口元。
分かってる、あなたは私が嫌いだもの。
それも無関心でいたいほどに。
もういいの。
"関わりたくたい"
あの時はっきりそう言うあなたを、私は見てしまったから。
そっと見つめているぐらいが、
そっと想っているぐらいが、お互いのため。
あなたの視線が私から外れる。
みんなの中心で、あの時のように笑うあなた。
そう、これでいいの。
私はそっとあなたから視線を外す。
たばこ、吸うようになったのね。
『そっと』
1/14/2025, 3:05:55 PM