シシー

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 意外と笑い物にされてしまうような、関係だよね。

 ただ力を分けてもらっただけだった。気まぐれに与えられたほんの少しの寵愛に溺れてそこから抜け出せない。
どれだけ取り繕っても、口を塞いでも、

『人を寄せ付けない雰囲気出してるよね』

という一言で私の気持ちも考えも打ち砕かれる。
愛されたい、私だけを見てほしい。ずっとべったりとかじゃなくて、話しているときに視線を合わせるとかそういうレベルのことなんだ。スマホばかりみて生返事ばかりで何も聞いていないのに同じ言葉に賛成したり反対したり鬱陶しい。そんな人たちに近づいてほしくないと思うのは自分勝手なのだろうか。



 珍しい、という理由だけで引っ張り出された舞台で私は正論を説いた。危険なのだと、これだけは守ってほしいと、私は公正を守る役目の審判に何度も伝えた。なのに鼻で笑うばかりで周知もせず立ち位置を雑に指し示すだけの人に、私はどれだけ自分の言葉と時間を費やせばいいのだろう。
 考えるのも嫌になって強制的に約束を守る約束をして、試合に臨んだ。何をするでもなく、私を愛してくれる最強の存在に任せて場を掌握する。何人かの首は飛んだけれど約束を破ったのだから仕方がない。私に責任はない、守ってほしいと約束したのに破った方が悪い。

「言葉も分からないのにどうしてここにいるの?」

 名門校だと自慢気にしていたくせに、この国の言語も公用語も分からない人がなぜここにいるの。レベルが低いのはどちらかな。私を馬鹿にする語彙力はあるのにおかしいね。まあ、それは私も同じだけれど。

 私は私を愛してくれる存在の言葉を理解できない。そもそも声すら聞こえない。姿は見えても影のように、音のないテレビのように動き回るだけで何も分からない。
同じ種族同士ですら分かり合えないのに、自意識過剰というやつだろうか。

 薬指にはめられた生花の指輪をなでる。1枚花弁が散るのを見届けて、またすぐに新たな蕾に姿を変える様を眺めた。永遠なんてないのに、これはもう永遠になろうとしている。

「私の言葉、どこまで理解できる?」





           【題:永遠なんて、ないけれど】

9/28/2025, 4:01:20 PM