共存と両立

Open App


 上手く生きるためのコツ。
 誰かが言っていたのを聞いてやってみるけれど、どれもこれも、私には合わないみたい。
 どうして私はこんなにも生きるのが下手なんだろう。
 周りの人達は、先人たちの知識や経験談を活かしてどんどん先に進んでいく。
 どうしてまだそんなところにいるの?
 純粋な疑問は、まるで容赦のない責め苦のよう。

 皆と同じにできないのは、失敗作?

 独り取り残された場所で、追いつこうと焦って、転げて、目の前には色々な種類の壁。みんな、軽々と登ってく。
 壁の向こうは、もう、なにも、分からない。
 私と同じ場所にいる人は、誰もいない。
 しかたがないから、壁を迂回出来る道を探すと、誰かが通った痕跡を見つけた。
 きっと過去にも、私みたいに生きるのが下手な人が居たんだと、それだけで、少しだけ安心した。
 もしかしたら、別の壁で躓いている人だって居たかもしれない。

 助けに行った方がいいのかな?

 けど、その壁に躓いている理由を、私に理解できるだろうか。私は理解して貰えなかった。躓くまで、この壁を登れない人なんていないだろうと、私も思っていた。

 なんて傲慢なのだろう。
 私も、誰かを置いてきた一人かもしれない。

 なら、私はこの壁を一人で超えなければならない。
 誰も助けない代わりに、誰にも助けは求めない。
 気づいてしまったから。
 私が私を失敗作と断じることは、私の後ろにいるかもしれない人達をも失敗作と詰るに等しい。

 ここで気づけなければ、知らないうちに、誰かを踏みつけにしていたのかもしれない。それは、自分自身を踏みつけにするのと一緒。
 たとえ、沢山の人達に踏みつけにされたとしても、私は私を含めた誰のことも、踏みつけにしたくない。

 私は失敗作じゃない。
 失敗作だとしても、私より先に進んだ人達には得られなかった気づきを、私は持っている。
 それはとても、尊いものだと思うから。

 上手く生きれなくていい。
 上手く生きようとして、取りこぼしてきたものがある。
 忘れかけたそれは、決して無くしてはいけないもの。

 先に進んだ人達の分も、拾い集めて、持っていこう。
 私は一人だから、大変かもしれないけど。
 いつか、一人ぼっちの誰かが追いついてくるかもしれない。
 いつか、一人ぼっちの誰かに追いつくかもしれない。

 その時を待ち侘びながら、進もう。


 

 


 

 

2/23/2024, 5:36:23 PM