きらきら光る、なんて小さな頃はよく歌っていた。
七夕になると星型に切り抜いた金銀の折り紙やシールをそこら中にはっていた。
だけど、ほんものの、夜空に光る星なんてずっと知らなかった。
だってそうだろう。街は人工の明かりが強すぎて星が負けてしまう。そうでなくとも、そびえる建物が多すぎて空はとても狭い。時折見える瞬きは飛行機のライトや人工衛星で、ほんものを知る機会なんてなかったのだから。
星とは星型をしたものであり、高感度カメラのレンズ越しにしか存在しないものだった。
はじめて星を知ったのは林間学校のとき。
街の明かりは山によって遮られ、車の走行音も酔っ払いの奇声もない。虫の声を聞いたのも、そのときがはじめてだった。
満天、降るよう、そうとしか言えなかった。肉眼でも判る程の大量の瞬き。ありすぎて、早見盤を使っているのに、なかなか星座を見つけることができなかった。
それに、星はほんとうにまたたいていた。それが大気の屈折率のせいだとしても、ちかちかと繰り返す強弱に目も心も惹きつけられた。
思わず、手が伸びそうになったのも仕方がない。大袈裟でなく、手を伸ばせば届きそうだったのだ。
就寝時間まで、それを過ぎてからもベッドに寝転がりながらずっと見ていた。
数年経った今ですらくっきり思い出せる程、瞼の裏に焼きつけたそれは価値観を変えるに十分過ぎた。
この世には隠れているもの、気づけないものが多すぎる。だけど、少し目を向けてみるだけでも世界はその姿を変える。
足元の花。流れる雲。噴水の水滴ひとつすら。
嗚呼、ほんとうに、この世は美しいもので溢れている!
7/5/2024, 5:35:59 PM