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老いた姿になった兄は魔物と出会しても
身体能力の衰えを一切見せない

少女も戦えないわけではない
しかし、生まれつき使うことの出来る魔術はまだ未熟

兄の背に守られ
サポートするにしても不発に終わることもあった


「…………」


依頼に出かけた兄の帰りを待っている中
誰の邪魔にならない森の中で
切り株に座り、魔術書を真剣な面持ちでそれを読んでいる


ずっと悩んでいるのだ


1人でも戦えるような、兄をちゃんと守れるような―
そうなりたい。そうならなければ…


幾度となく兄の背を見ている内に
その気持ちはどんどん大きくなっていた


実践もしているが
どうも安定しない


「はぁ…今日はもう止めよう」


地面を見つめて軽く目を伏せる
陽も傾いていたため、今回泊まる宿屋へと戻って行った


―――――


「あぁ、帰ってきたか。おかえり」

「―…ただいま」

依頼から帰ってきていた兄が少女の姿を見て
皺のある目を細めて笑った

依頼達成料として受け取ったお金で調達したのか
ハーブティーを入れている兄

空いている椅子に腰を下ろすと
ほどよく蒸らされた
ハーブティーの入ったカップを差し出してくる


「……ありがと」


普段通りの兄

少女が1人で魔術の特訓をしていることを
きっと知っているはずだ
だが、励ます言葉も心配する言葉も口にしない


―本当にいつも通り―


ハーブティーを口に含むと懐かしく思う
国王であった父とお菓子をいつも焼いてくれた母
2人の笑顔を思い出す


(焦ってたのかな、私…)


鼻の奥がツンとするような感覚を覚え
それを振り払うように一気にハーブティーを流し込み
兄の方に顔を向けて一言告げる



「クッキーもある?あるなら、ちょうだい」


妹の言葉に優しく微笑む

小さな紙の袋を取り出して
台に置き広げれば、2人でクッキーを食べたのだった



[バカみたい] ― 「2人きりの旅」妹視点より―

3/22/2024, 4:06:54 PM