川柳えむ

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 あの日、黄金色に輝く花畑で、君を見失った。

 背が高い向日葵の間を駆け抜けていく。
 僕はそんな君を必死に追いかける。
 向日葵と向日葵の影に紛れて、君はどこまでも行ってしまった。

 笑いながら遠ざかった声がいつしか聞こえなくなって、君の姿を全く見つけられなくて。本格的にまずいことになったと、たくさんの大人達が慌てる姿を見て、ようやく気付いて震えた。
 そしてそのまま、今でも君に出会えていない。あの背の高い向日葵が並ぶその隙間に、君を奪われてしまった。

 あの日、黄金色に輝く花畑で、君を見失った。
 未だに消えたあの後ろ姿を忘れられずにいる。


『花畑』

9/17/2023, 1:43:32 PM