ハルりん🌻🍀

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#キンモクセイ

キンモクセイの約束

駅前の並木道に、今年もキンモクセイが香り始めた。

橙色の小さな花が風に揺れるたび、あの日の記憶が蘇る。高校の帰り道、彼女はいつもキンモクセイの木の下で待っていた。制服のリボンを少し緩めて、風に髪をなびかせながら。

「この香り、好きなんだよね。なんか、秋が来たって感じがする」

そう言って笑った彼女の横顔が、今でも忘れられない。

卒業の日、彼女は突然転校することになった。理由は聞けなかった。ただ、最後にキンモクセイの木の下で会ったとき、彼女は小さな瓶を手渡してくれた。

「これ、キンモクセイの香水。来年もこの季節になったら、ここで待ってるから」

それから何年も、秋になるたびに僕はその場所に通った。けれど彼女は現れなかった。

今年もまた、キンモクセイが香る。瓶の香水はもう使い切ってしまったけれど、香りだけは記憶の中で鮮やかに残っている。

ふと、並木道の向こうに人影が見えた。風に揺れる髪、懐かしいリボン。

「…待たせちゃったね」

彼女は微笑んだ。キンモクセイの香りが、ふたりの間をそっと包み込んだ。

11/4/2025, 9:39:49 PM