答えは、まだ
逃げてばかりの人生だった。
直哉みたいにやりたいように堂々と出来るわけでもないし、ゲイバレするのが怖くて、告白してきた女の人と付き合ったりもしていた。流されるがまま、色んなことをしたりしなかったり。
直哉が自殺して、もっと直哉と話でもなんでもすれば良かったと後悔して。俺はもう、逃げないと決めた。
「辰希さん、ごめん……」
頬を赤く染めた貴春の熱のこもった眼差しに、気付かないほど鈍感ではなかった。
「……ふざけんな。俺を、直哉の代わりにしなや!」
すぐにそう口をついて出たら良かったのだが、逃げ隠れに特化した俺の体は、その言葉を飲み込ませ、続きを聞く前にその場から走り逃げることを選んだ。
それがおよそ半年前、桜の花が満員の頃だった。
時間が経てば経つほど怒りは収まり、貴春のことを考えると、その物腰の柔らかさに直哉の面影を見出し、懐かしく落ち着く心地にさえなっていた。
「……代わりにしちょるんは、俺もか」
静かに雨が窓を叩く自室で、冷えたベッドにごろんと寝転がった。直哉が遺書を隠していたベッドだ。
直哉のことを好きになったことはない。あいつはただの幼馴染みで、出席日数が足りなくて留年したおっちょこちょいで、不器用で、俺の隣にいながらいつも独りだった。守りたかった、という気持ちが恋なら、きっとこれも恋だろう。
直哉に対する気持ちの答えは、幾度考えても分からない。本人がいない今、きっと一生分からない。
じゃあ、貴春は? 貴春に対する俺の気持ちは?
「……気持ち悪い。幼馴染みの恋人の恋人とか、ごめんちや」
結局はそこに落ち着く。
けれど未だに向き合うことから逃げ、貴春に返事を出来ずにいた。
9/17/2025, 1:56:39 AM