24

Open App

▶59.「みかん」
58.「冬休み」
:
1.「永遠に」近い時を生きる人形‪✕‬‪✕‬‪✕‬
---
「そろそろ石が温まった頃だ」
人形は燃やさずにおいた枝を使って、焚き火の中に入れていた小さな石を取り出した。
人間が持つならば大きいものの方が良いだろうが、
ナナホシには小さいもので十分だ。
それを手ぶくろの中へ転がし入れて、さらに指先の方へ押し込む。

「できたぞ」
「ヤッタ」

簡易湯たんぽ付き寝ぶくろの完成だ。

「どうだ?」
「暖カイ…トテモイイ」
「そうか」
「ア、入口閉メテ」

そそくさと潜り込んだナナホシが専用の寝ぶくろの中から答えた。
人形は、そっと手袋を押さえて窄めた後、
石を取り出す際に動いた枝の調整を始めた。
瞳に炎が映り込み、揺らめく。

「ナナホシの動力になるものは熱だけか?」
「実ハ、モウ1ツ」
「それは何だ」
「みかん」
「なんだと?」
「ダカラ、みかん」
「すまない、うまく聞き取れないようだ」
「イレフスト国ニ自生スル柑橘ノ1種。1年ニ1度ノ摂取ガ必要」
「できないと、どうなるんだ」
「他国ノ人間ニ渡ッタト判断シテ、爆発スル」

パチン、と焚き火から破裂音が響いた。

「それを話してしまったら、誰でも取りに向かうのではないか」
「他国ノ人間ニハ言エナイ、ソウイウ設計。デモ‪✕‬‪✕‬‪✕‬人間ジャナイ。言エル」
「抜け穴か」
「マァネ」
「…私たちには、まだ解き明かされていないことが多いようだな」
「ウン」

12/30/2024, 7:23:02 AM