【神様だけが知っている】
「〇〇くん、送ってくれてありがとう!また明日ね」
「うん、また明日学校で」
自分の家に帰る彼を見送りながら、
彼が居なくなったのを確認し、
私はそっと自分の部屋に戻った。
〇〇くんと付き合い始めて1ヶ月。
初めてできた彼氏に照れながら手を繋いで帰った帰り道。手を繋いだぬくもりから、
ほんとに彼と付き合えたんだと実感が湧いて手が震えた。
「私、本当に〇〇くんと付き合ってるんだ…」
静かな部屋の中で一人、そっと呟く。
クラスで人気者の〇〇くんと付き合う為に
自分がやれる事は何でもやった。
彼が大人しい子が好きと聞けば、性格も直したし
彼が好きそうな仕草や行動をするように心がけた。
髪型もショートよりロングが好きと聞けば、
髪を伸ばして彼が好きそうな髪型を練習した。
メイクも自分が好きなメイクより、
彼が好きそうなメイクを練習したし、
洋服だって自分の好きなものより、
彼の好きそうな服を買った。
彼を好きになってから自分の「好き」より、
彼の「好き」を優先した。
嫉妬する女は嫌いと言っていたから、
彼が告白されても嫉妬しないし
明らかに彼に好意を抱いている女が
彼の体に触れていても、
見て見ぬ振りをしてやり過ごした。
彼好みの女になってから半年。
彼と話す機会がだんだんと増えて、
ついに、彼から告白された。
彼が好きなのは本当の私じゃないけれど、
彼のためだったら自分も殺せる。
これは、神様だけが知っている私だけの秘密ーー。
7/4/2024, 2:13:12 PM