影が見えぬ故、掴めなかった。ただ青さの限りと、それを輝かせんとばかりに空を飛ぶ泡との、その距離を。まるでキャンバスにも似ているだろうに、どうしてもそうは思えない。ただ、神様がこの地を描くためのキャンバスとして使ったその跡が、我々の側から見えているだけなのだろうか。しかしながら、そう思ってしまえば、どうにも楽に思えた。自身の悩みが砂粒一つほどのものに思えるというのもあるが、そう思わせてくれるのは、そうして描いたものがこうして動いているのだとしたら、それには大きな意味があるのだと、そう考えるのだ。神でさえ、絵を描くのだ。だからこそ、今更なんのためにと、そう描く必要などまるで無かったのだ。
7/9/2025, 4:45:18 PM