工場で働く1人の青年がいた。
コンベアから流れる小さな部品たちを眺め、青年は考える。
(俺は今のままで良いのだろうか)
今の生活は平坦だがそれなりに安定している。
しかし、目の前で流れる部品たちを見ていると、所詮、自分も社会の歯車という部品の一部でしかないことを思い知らされているような気がして、とても不安になった。
形容し難い不安感に襲われて、自分を見失いかけた青年はある一つの提案を思いつく。
(そうだ、旅をしよう。そこで本当の自分を見つけるんだ)
次の日、青年は仕事を辞め、小さなバッグに荷物を詰め込むと、世界一周の旅に出た。
世界一の大都市を見て周り、異国の言葉と文化に触れ、貧しい国の生活を知ることもできた。
長い旅路の果てに、青年は自宅へと帰還する。
そして、ある一つの事実に気づいてしまう。
「なんということだ。来月の家賃を支払うお金がない」
慌てて知人から日払いの仕事を紹介して貰うのだが、そこは以前勤務していた工場だった。
2/1/2024, 7:44:12 AM