いぐあな

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300字小説

お袋の味は

 冬の寒空の下、息子のお嫁さんがやってきた。
「今年こそはお義母さんのクリスマスチキンを食べさせろって……」
 ネットから有名シェフのレシピまで調べて作ったのに違うと言うらしい。しまいには「お袋はもっと愛を注いでいた!」なんて……。
「バカ息子が……結婚した途端マザコンになりやがって……」
 私は平身低頭謝ってレシピを教えた。

「美味い! お袋の味はこれだよ!」
「美味しい!」
 義母の秘蔵のレシピ……地元有名店のタレに漬け込んだチキンに夫と息子が舌鼓を打つ。
「やっと合格点だ」
 あのバカは正月の帰省に義父母が二人がかりでしめてくれるが。
「……息子も手遅れにならないうちに『お袋の味』への過剰な幻想、解いておかないとなぁ」

お題「愛を注いで」

12/13/2023, 11:20:55 AM