spine

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 あなたが来てくれたというだけで、高揚感に埋もれてしまいそうになる。それと同時に、次会えるのはいつだろう、って思う。会話が止まったふとした瞬間に、時々。
 行こう、ってきらきらの笑顔で差し伸べてくれた手を掴んで、比較的綺麗な地面に座ってもらう。そんな気持ちが伝わったのか、次来る時は折り紙を持ってくるよ、なんて言ってくれた。紙を折って、飛行機とか、鶴とか風船とかが、作れちゃうらしい。
 一通り話終わった後、影が濃くなって来た。もう帰らなきゃ叱られちゃう、って言いながら、寂しそうに此方を見る。分かってる、さっきこっそり抜け出して来たって言ってたもんな…。分かってるのに、もっと一緒に居たい。
 すると、ポケットから取り出した何かを手渡してきて。甘くて美味しい飴、食べた事はない…けど。前話してくれたやつだって事は分かる。
 また、自分を思い出して会いたくなったら食べて、そしたら絶対来る、って。分かった!って言って手を振った。見えなくなっても。暗くなって街の灯りが光り出す。
 その時やっと、自分の手が冷たくなっているのに気付いて、いつもの定位置に戻る。此処には、光が差し込まない。怖くて手足が震えて、ぎゅっと膝を抱え込む。ポケットに大事にしまった飴を、ズボンの上から撫でる。今直ぐにでも食べてしまいたいくらいだったけど、口に入れたら溶けてしまうらしいから。それは、なんだか悲しい。
 この路地で、明日には生きてる保証なんてないけど。明日も明後日もその次の日も、生き抜いてまたあなたが来てくれるなら、耐えようって思える気がする。

「またいつか」〜いつか、っていつなんだろうな。〜

7/23/2025, 7:23:17 AM