わたしはあなたに呪いをかける。
死ぬ前の晩には、必ず、あなたに願いを告げると決めている。たった一つ、叶えたいお願いがあるのって、やすっぽい悲劇のヒロインみたいな顔して。
死んでしまう人の願いは、とてもせつない。なぜかって、絶対に叶うことがないからだ。
だからこそ、あなたはそれを忘れられない。多分、生涯それを思い出す、繰り返し、何度も、何度も。
どんな願いがいいか、私は毎日考えている。
冬に死ぬのなら、夏にしか食べられない果物が食べたかったと言うの。
そうしたら、あなたは夏のスーパーでそれを見かけるたび、私を思って苦しくなるでしょ。
雨の日に死ぬのなら、よく晴れた公園を散歩したかったって言うわ。
そうしたら、あなたは晴れた日ほど、私を思って悲しくなるでしょ。
あなたが、自分のすべてを捧げて人を愛せるような人だったら、たぶん私はあなたに世界で一番きれいなものだけ遺していこうとしたと思う。
でも、あなたはそうでもないし。私だって、そうでもない。
だから、あなたに呪いをかける。
できるかぎり、持続力のつよい、息の長い呪いを。
私の本当のたった一つの願いは、多分、
あなたが生涯、私を忘れないこと。
3/10/2025, 1:41:07 PM