その神殿には、『永遠の灯火』という、とてもとても大切なランプがありました。神殿の奥に大切に置かれているそのランプは、火が消えることのないように毎日街の人びとによって火が灯され続けていました。
今日は、エレンの初めてのお役目の日でした。火を灯すのは毎朝6時と決まっています。普段から大人しいエレンは、ドキドキで一睡もできませんでしたが、朝家を出るときに、弟のリアに「お兄ちゃんがんばって!」と声をかけられ、少しだけ緊張の糸がほどけたのでした。
エレンは神殿に着くと、教えてもらったとおりに白い衣を纏いました。そして、太いローソクに火をつけ、ゆっくりと呼吸を整えてから、静かに神殿の奥に歩き始めました。ランプのある場所までこの火を消してはなりません。コツコツコツコツ…と、エレンが歩く音が神殿内に鳴り響きます。そのとき、背後からびゅるん!と風が吹き、びっくりしたエレンは手に持っているローソクを床に落としてしまいました。
「…?!」
エレンは何が起こったのか分からず、その場に立ちすくんでしまいました。下をみると、落ちたローソクの火は消えています。涙がとめどなく流れ出てきました。どうすることもできないエレンは、ただローソクを見つめることしかできませんでした。
…どのくらい時間が過ぎたでしょう?
神殿の奥がなにやら光っています。だんだんとその光が強くなっています。エレンはその光に気づくと、とっさに落ちたローソクを拾いあげ、光に向かって走りだしました。近づくにつれエレンは目が開けられなくなりました。夢中で走っているからか、身体が溶けてなくなっているような気持ちになりました。さっきまでの悲しみもどこかに消え、ふんわりとしたあたたかさに包まれてきました。
「ああ、なんて心地よいんだ……」
エレンは、そう、つぶやきました。
⭐⭐⭐
エレンの家では、おばあちゃんが朝ごはんの支度をしています。メニューはエレンの大好物のシチューです。
「お兄ちゃん、はやく帰ってこないかなあ。」
弟のリアは、テーブルを拭きながら、そうつぶやきました。
12/7/2025, 6:34:26 AM