光合成

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『大好きな君に』

僕らはよく、この海を一緒に散歩した。
よく晴れた暖かい日で、海岸沿いを歩いた。
真っ青な空に大きな翼を広げたトンビをよく覚えている。僕らの上をぐーるぐると周回して、獲物を探していた。

海は太陽の光をいっぱいに浴びてキラキラと輝き、砂浜さえも輝いて見えた。
シーグラスや貝殻、流木で溢れた浜は僕らにとっては宝の山だった。
裸足になって夢中で駆け回ったのを覚えている。
今となればガラスの破片だとか欠けた貝殻で、よく怪我をしなかったなと思う。

とにかく、僕らは一緒にその宝の山で各々大切なものを集めていた。
僕は龍みたいな流木を、君は綺麗な薄ピンクの二枚貝を宝物にしていた。

大学進学を機にこの街を離れた僕は、就職と共に戻ってきた。
1人で海岸を歩きながらあの日のことを思い出す。

高校の卒業式の日、僕らはここで散歩をした。
君のショートヘアは腰まで届くロングヘアに変わって、君より低かった僕の身長はすっかり頭2つ分高くなっていた。
寂しくなるねと笑う君は海を見つめたままだった。
僕は彼女のなびく髪を見つめるばかりで、手を伸ばせば届く距離の、その手を掴めなかった。

君がおもむろにネックレスを外す。
シルバーのチェーンには薄ピンクの貝殻が通されていた。彼女が僕にそれを差し出したが、戸惑って受け取らない僕に無理やり手に握らせた。
「片割れは私が持ってるから、だから約束ね」
そう言った彼女はポケットから同じようなネックレスを取り出した。

何が約束なのか、僕にはちゃんと伝わった。
言葉よりもずっと深いところで僕らは繋がっているような気がした。

大好きな君に、約束を果たしに来たよ。
ちゃんと来たよ。


2026.03.04
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3/4/2026, 10:22:19 AM