織川ゑトウ

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『空虚一灯(くうきょいっとう)』

ある幼女は天地逆さまの場所に居りました。
そこはまるで雪景色のよう、太陽がさんさんと降り注ぐ場所でした。

ある少女はあたたかな海の中に居りました。
そこはまるで泥中のよう、曇り空が雷鳴を響かせました。

ある少女は冷たくなった海の中に閉じ籠りました。
そこはまるで幻想のよう、愛が儚く散りました。

ある少女は気付きました。
自分の居場所はここではないのだと。

ある少女は手を伸ばします。

輝く空へ、輝く月へ、煌々とした我が親族へ。

ある少女は絶望しました。
誰も手を差し伸べてはくれませんでした。

ある少女は知りました。

最初から自分は一人だったのだと。

母は優しい声をしています。ですが言うことは末恐ろしいです。
父は愛情深い性格です。ですが自己中心的です。相手の心など読めないのです。
姉は優しい性格をしています。その分の厄介は此方へ飛んできます。

皆、自分が可愛いのです。

絶望、絶望、実に絶望。

ふと、ピアノの音色が聞こえました。
泥で出来たイルカの声に乗せ、嫌気がさす程愉しそうな音色でした。

自分の声はかすれ、金色の夜に消えて行きます。

カルシウムの船の音。汽笛は静かに喚きます。

あぁ、船の網に捕まってしまいました。
小さく、人工的な光が頭を唸らせます。

誰かが何かを喋っています。

突然、頬に雨が溶けました。
ほろほろほろろと優しく降っているみたいです。

あぁ、私の居場所はここだったのですね。

赤々と此方を照らす誰かの胸はとても懐かしく思えました。


お題『空が泣く』

9/16/2023, 2:09:38 PM