無有

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『あの頃の私へ』

幼い頃の僕。
様々なことが特別に感じていたあの頃。特別だったものは、今では当たり前のことになってしまった。

電車に乗ること。
車ではない乗り物で遠出をする時、改札の音や、電車が来る時のアナウンス、発車のメロディには胸を躍らせた。
しかし、電車通学をするようになってからは耳馴染みのある音にしかならなくなった。

友達と遊ぶこと。
放課後に小学校の校庭や公園に出掛けて、かくれんぼしたり、鬼ごっこをしたり。全力で遊び、たかが遊びの勝ち負けにこだわった。
しかし、行動範囲が広がれば、友人と出かけるのは、ほとんどがお金がかかる場所になった。

夜に外出すること。
昼間とは打って変わって、静寂が街を包む。車や人通りも少なく、自分しか存在していないのかもしれないと想像を膨らませた。
しかし、バイトや学校など、帰宅時間が遅くなると、夜でも人は活発に動くのだと知った。

あの頃の僕よ。
君は早く大人になり、もっと自分がやりたいようにしたいと思っていることだろう。

確かに、大人になれば、自分が使えるお金は増え、その分できることも増える。人との交流も多くなり、より多くの価値観を知って、人間性も豊かになる。

けど、失ってしまうことも多い。
大人になってしまえば、責任がついてまわる。自分の中の当たり前が増えていく。自分の限界を勝手に決めて、諦めることも多い。

あの頃の僕よ。
大人から見たら何気ないことでも、幼い君ならキラキラと輝いて見えるだろう。
大人が、挑戦する前から諦めてしまうようなことでも、君は無鉄砲に挑戦し、がむしゃらになるんだろう。

これらは、子供だけが持つ特権だ。
だから、どうか何気ない日々を大切にして欲しい。
子供でいられる時間は、人生の中で一瞬なのだから。

5/24/2024, 3:15:56 PM