野中

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 去っていく友人の背を見送って、膝から崩れ落ちた。
 夕焼けに溶けていく彼女の髪は美しく、未来への希望で光り輝いていた。今しがた打ち捨てた私との友情など、きっともう、どうでも良い。

 彼女との想い出は、鮮度を失い、私の胸を錆で満たしていくのだ。

 彼女はそうならないだろうけど。

 私を捨てたことも忘れて、悠然と明日を生きるはずだ。切り替えが早いから。記憶を美化しがちだから。そういう癖まで理解していたのに、私は上手く、彼女の友達をやれなかった。

 嫌いきれない。
 憎みきれない。
 好きだった。

 もう逢うことはない。

3/6/2024, 6:11:33 PM