NoName

Open App

今日も世界は回っている。
自分はその歯車の一部でしかなくて、何なら、なくなったことにさえ気づいてもらえないくらい、ちっぽけな存在なのかもしれない。

そんなことを思いながら、一口。
美味しくも不味くもないそれを好んで飲むようになったのは、いつからだっけ。

飲み始めた頃は味に慣れなくて吐き出しかけたくせに、今ではすっかりお友達のひとりだ。
このお友達は、正直増やしたくはなかったけど、今さら嘆いても仕方ない。

まだまだ中身の詰まったそれを片手に、手すりに凭れて街を見下ろした。

上手くいかない訳じゃない。何なら、それなりに生活もできているし、仕事も趣味もちゃんとある。
それでも、ここに来ることを止められないのは、何かしら溜め込んでいるからで。
それが解らないからさらにモヤモヤして、の悪循環。

本当は、解っているんだと思う。
解っているくせに解らない振りをして、空を仰ぐ。

月夜にしか素直になれない性分は、今宵も健在らしい。



月夜

3/7/2023, 2:56:17 PM