スマートフォンを操作して、音楽アプリを開く。普段であれば、ライブラリの中から、その日の気分に合った曲をいくつかピックアップしてファイルを作り、ワイヤレスイヤホンを片耳に装着して、白い三角のマークをタップして、学校に着くまでの間、ファイル内の曲をランダムに流し続けるのが主だ。
だが稀に、一人きりの自室で、形にならない不安や小さな寂しさ抱え込んだ時、共感してくれるような、それでいて慰めてくれるような曲を聴きたくなる時がある。
画面をそっとスクロールして、目的の一曲を見つけ出す。弱々しく再生マークを押すと、激しさはない、どこか消え入ってしまいそうな儚さを伴った歌声、冷たくも痛くはない優しい雨音を想起させるような歌詞、それに物静かなメロディをまとわせた曲が、散らかった部屋みたいにゴチャゴチャしていた心を、少しずつ落ち着かせてくれていた。聴こえてくる言葉の一つ一つは、小さなナイフみたいに感傷中の心に更に切込みを入れてくる。でもそれと同時にボロボロになった心に寄り添いながら、大丈夫だよ、心配ないよと優しく、穏やかに声を掛けてくれているような気がした。
5/25/2025, 11:59:46 AM