やまない雨はない。どこかで聞いた言葉が脳裏によぎりながら窓をつたう水滴を目で追う。
テレビからは梅雨入りしたという憂鬱な知らせが定期的に流れ、休みの日だというのに上がらない気分を落ち着かせるためにリモコンで電源を落とす。
今日も1日ネットサーフィンかなぁとスマホを手に動画アプリを開き、適当な動画を流す。
流れる色とりどりの派手な演出、賑やかな笑い声、引き込まれる音楽に自然と笑みが零れる。
気がつけば時間が過ぎ、動いてないにも関わらず適度な疲労感にため息を吐く。
外の空気を吸いたい、体を動かしたいと思うが、生憎の雨。ちょっとの外出も途端に面倒に感じる。
どんよりとした風景を移す窓に近付き、止んでくれと念じながら額を付けると、ひんやりとした心地いい感触に目を閉じる。
ざぁざぁ、ぽつんぽつん、ぴちゃん。
テレビやスマホから流れていた音が無くなって、ようやく自然の音が耳に入ってきた。
色んな音が混じり合い、まるでオーケストラのようだと格好つけた感想が頭に浮かぶ。
雨が入り込まないように窓を少し開け、使い込まれた寝具に横になると、意識して雨の音を聴こうと耳を済ませた。
ざぁざぁ、ぽつんぽつん、ぴちゃん。
先程までの疲労感もあり、自然の音楽に少しずつ睡眠欲が湧いて出てくる。
今はこの雨音に包まれて惰眠を貪るのもいいかもしれない。やまない雨はないのだから、この時だけの音を楽しみ、太陽がまた顔を出す事を期待しながら重くなってきた瞼に抵抗せずに身を任せる。
部屋に流れる雨音のオーケストラに、すうすうと音がひとつ増えた。
6/11/2025, 2:02:27 PM