川柳えむ

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 ようやく辿り着いた。トレジャーハンターの彼等三人組がずっと探し求めていた地へ。長い旅路を経て、今、夢のような光景が目の前に広がっている。

「すげぇ……」

 思わず息を呑んだ。
 洞窟の最深部、まさしく宝の山がそこにあった。
 長い年月を感じさせる錆び付いた大量の金貨やくすんだ宝石、装飾品が、天井から漏れる日の光に照らされきらきらと輝いている。
 一人の男が駆け出して宝の山にダイブした。
 とうとう見つけた。手に入れたんだ。夢にまで見たお宝を。
 それを、仲間の女は驚いた様子で、もう一人の仲間の男は「こいつは全く仕方ないな」と言った表情で見ていた。

「でもさ」

 宝の山に埋もれたまま、男が呟く。

「本当の宝物は、ここまで一緒に冒険に付き合ってくれたお前らだって、俺は思ってるよ」

 その言葉を聞いた仲間も、言った本人も、照れくさそうに笑った。
 宝の感触をしばらく堪能してから起き上がり、よくよく辺りを見渡してみると、宝の山の向こう側に台座のような物があった。その上には、宝箱が置かれている。
 まるで引き寄せられるのように台座のへと向かい、正面に立つと宝箱をよく見た。細かい装飾が施された美しい宝箱だ。
 ふと視線を落とした。
 その瞬間だった。
 背中から胸を貫き、衝撃が走る。真っ赤な血が吹き出ている。
 振り返ると、仲間達が彼を見ていた。真っ赤に染まった仲間愛用のダガーを手にして。
 何故かと問う間もなく、彼は倒れた。

「俺達が宝だって言うならさ、ここの宝は俺らに譲ってくれよ」
「鬱陶しかったのよ。トレジャーハンターのくせに、あなたのその博愛精神や正義感が」

 何かを言おうとしても、口からごぼごぼと血が溢れ、言葉にならない。
 仲間の男が宝箱に手を伸ばした。

 ……やめろ……――危ない、それは罠だ!

 次の瞬間、大きな音を立て、地面が割れた。驚いて足下を見る。視線の先には、人を今にも飲み込もうと待ち構える、巨大なワニがうじゃうじゃといた。

「うわああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「キャ――――――――ッッ!」

 三人仲良く床下へ落ちていく。
 男は体から血を流しながらも最期の力を振り絞り、二人を抱き抱えると急いで鉤縄を宙に向かって投げた。

「…………後……は、頼っ……」

 そう言い残し、仲間が縄を掴んだことを確認すると、安心した表情で落ちていった。
 そしてようやく、仲間達は本当の宝物がどんなものなのか気付いたのだった。


『宝物』

11/21/2023, 5:59:48 AM