狐コンコン(フィクション小説)

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6:静寂に包まれた部屋 14


小さい頃、静かな部屋が嫌いだった。
一人っ子は親を独り占めできるとか、甘やかされるとか、期待が重いとかよく聞くけど我が家は私が甘えたがりの末っ子気質という以外はよくありふれた一般の家庭だった。

ありふれてた。そのはず。

でも父は私より祖母を優先した。
何があろうと祖母からの電話に出て、私に話しかけるよりも優しい声で楽しそうに話した。
私が風邪をひいても、祖母が心配だと言い祖母の家へと去った。
私が泣きながら助けを求めた時、「近所に何て言われるか」と周りからの評価を第一に考えた。祖母へは「私は元気だよ」と伝えなさいと言われた。

母は私より祖父を優先した。
毎晩の電話に会話を切られる事が辛くて泣いて嫌だと言った時、心底めんどくさそうな顔で「そんな事で泣いているの?」と言い捨てた。
母が祖父と話す時、母の目に私はいつも写っていなかった。
風邪をひいた時、母は祖父から呼ばれてると言い祖父の家へと去った。

静かな部屋は嫌いだった。
起きたら誰もいなくて、涙が出るのに誰も拭ってくれないから。まま、ぱぱ、と大声でどれだけ呼ぼうと誰も来ないから。お腹が空いても何もないから。どれだけ熱が高くても誰も看病してくれないから。

耳がきぃんとするから。
世界にひとりぼっちのような気がするから。



どれだけ親を求めても、親は自分の親を求めるから。
私は誰の子供?あなたたちの子供じゃなかったの?

9/30/2024, 1:51:30 AM