読んでくれてありがとう

Open App

雨が好きだ。と言っても、土砂降りは嫌いだ。
優しく肩を濡らし、髪を滴る。
あたりにはあたたかくねっとりした空気が漂い、桜の上を滴が跳ねる。
優しい、優しい__。
あの雨が好きだ。

今日も、雨が降っている。私の席は窓際なので、窓を優しく打つ雨の音で気がついた。
あの日も、雨だった。

わたしには、幼稚園の頃からの親友がいた。
中学を卒業して、別々になるまで__。
ずっと一緒にいた。
大好きだった。ずっと一緒でいたいと思っていた。
彼女もそう思っていた。
だが、彼女が持っているわたしへの愛は、ちょっと違っていた。
彼女はわたしに恋していたのだ。
卒業式まであと数日の帰り道、あの雨の中で、伝えられたのだ。
目に涙を浮かべ、鼻と頬を赤らませて。
いつもより早く満開となった桜が、ゆっくりと雨を垂らしていた。
正直、驚いた。
冗談だと思える雰囲気ではなかったから、戸惑った。
でも
彼女と気まずいまま卒業したくなかった。
それに
あなたとなら、いつまでもいれる気がした。
だから_

2人で泣いた。顔を濡らす雫が、雨なのか、涙なのか__。
雨を優しいと思ったのは、それが初めてだった。



高校を卒業したら、2人は、××で暮らす。頭のいい彼女は、国立大学を受けるのだ。
わたしもそこへついていって、どこかで職を探して、2人で一緒に住むのだ。
〇〇が、合格しますように__。
窓の外の桜を見ながら、願った。

4/21/2023, 11:29:50 AM